足の異常と健康との定義
足の異常と健康との関係は、1.安定機能の低下、2.免震機能の低下、3.運動機能の低下とあるが、時間経過を計算に入れた場合、2.の免震機能の低下が蓄積され過労性が増していくのである。
ビルや家が最も早く壊れるのは、地震の縦揺れつまり「衝撃波」と、もうひとつ横揺れつまり「ねじれ波」である。ビルや家は地震が来ない限り200~300年も形を保持できるが、人間はビルや家と違い2本足で歩く為、その足裏に外反母趾や指上げ足などの足裏の異常があると、歩く度に地震でいう「縦揺れ(衝撃波)と横揺れ(ねじれ波)」という介達外力を発生させてしまうのである。この1回の「縦揺れ(衝撃波)と横揺れ(ねじれ波)」は弱い為自覚することができないが、スポーツや日常の生活環境条件により、半年・1年・3年と反復させると地震のエネルギーに匹敵した大きな破壊力となり、構造学的に歪みの大きいところから破壊していく。これが、負傷の瞬間を特定できない損傷やスポーツ障害であり、亜急性・慢性疾患・神経不調の最大原因だったのである。
歩く時は、必ず衝撃波とねじれ波が発生している、という事実に気付くべきである。
そして、バランスの保たれた足裏の機能は、その衝撃波とねじれ波を吸収・無害化し、バランスの不安定な足裏は、過剰な衝撃波とねじれ波を身体に蓄積させてしまう、ということである。これが、同じ条件下であっても障害を発生する者と、より健康になる者との差になっているのである。
詳しい説明は、著書『過労性構造体医学』(医道の日本社)を参照下さい。
足裏の異常と障害発生例のまとめ
■1.安定機能の低下(縦×横×高さ)×
(例)
顎関節症、偏頭痛、左肩こり、顔面の左右差、側弯症、猫背、骨盤のズレ、O脚、下肢の長短差、開脚運動制限、悪い歩き方・走り方、骨盤の四角映像、下半身太り、巻き爪
■2.免震機能の低下(時間)×
(例)
関節の変形、疲労骨折多発、中学2年生の分離症の多発、中高生のヘルニアの激増、半月板骨折、頚椎の痛みや変形多発、スポーツ障害多発、アキレス腱断裂の根本原因、自律神経失調症(頭痛、肩凝り、メニエル、高血圧、低血圧、うつ病、著しい冷え性、パニック症、不眠、頭の重さ、頚のだるさ、ED、眼圧異常)など
■3.運動機能の低下(環境)×
(例)
運動能力の低下、柔軟性・敏捷性・調整能力の低下、持久力の低下、顔面転倒、子供の転倒率と骨折の頻度の比例、成人病の発生原因、高脂血症、心筋梗塞、脳溢血、脳梗塞、生活習慣病が原因となる糖尿病
足裏にある4つのアーチ
今まで足裏のアーチとして1.内側のアーチ(A-B)2.外側のアーチ(A-C)それに3.横アーチ(B-C)がいわれてきたが、これでは不十分である。なぜなら、足指も重要なアーチの役割をしているからだ。
足のアーチにおいて正しい構造とは、(ABD+ACE)からなるふたつの縦アーチと(BC+DE)からなるふたつの横アーチの役割をしている(図1)。
このように、足指も縦アーチと横アーチの役割をしているのだ。
人間は歩行において縦アーチ・横アーチそれぞれのアーチの重心点を中心に常にバランスを一つに保ちながら効率よく歩くことを最優先している。内側のアーチ、外側のアーチの両方を使って歩くことはあり得ない。
図1 足裏には2つの縦アーチと2つの横アーチがある
正常な足と不安定な足における足底部へのストレスの違いは、次のようにまとめられる。
【正常な足の特徴】(図2)
1.指先、指の付け根、踵の3点を使った「正常な3点歩行」。
2.2つの正しい縦アーチがある。
3.歩行時の重心点が足底部の中心にある。
【指上げ足の特徴】
1.指先を使わず、指の付け根と踵だけの2点を使った「不安定な2点歩行」。
2.足底部のアーチが短縮すると共に高くなり、重心が踵に片寄る。
足裏には2つの縦アーチと2つの横アーチがある-
3点を使って歩く
3点と歩行ライン
正しい歩行ラインと悪い歩行ライン
正しい歩行ラインは図3のように蹴り出すとき、母指がテコの原理でいうところの「力点」となり、母趾球部が「支点」となり、「作用点」が踵になる。
「力点」・「支点」・「作用点」のバランスが効率的に保たれ、歩行ラインが安定している。 歩行時に発生する衝撃波やねじれ波を吸収無害化。
生理的歩行ラインが消失し、「力点」・「支点」・「作用点」のバランスが小さすぎるため、歩行時に過剰な衝撃波を受ける!
歩行ラインのカーブが増大し、「力点」・「支点」・「作用点」のバランスが大きすぎるため、歩行時に、過剰なねじれ波を受ける!
このように「力点」・「支点」・「作用点」が力学的に安定している場合、歩行効率を高めることができる。しかし、図4のように「指上げ足」・「ハイアーチ足」の場合、「力点」・「支点」・「作用点」の角度が標準より小さくなり過ぎるので、歩行時「過剰な衝撃波」が発生し、これが反復性の介達外力になって上部に繰り返し伝わってします。
一方、「外反母趾」・「扁平足」では図5のように「力点」・「支点」・「作用点」の角度が大きくなりすぎるので、歩行時「過剰なねじれ波」が発生し、これが反復性の介達外力となって上部に繰り返し伝わってしまう。
いずれも、足裏の不安定と共に歩行効率が低下し、過労学的損傷を発生させている。これが、歩行ラインの理論である。
足裏のバランスを整えるメカニズム足と健康との基礎理論
足裏の不安定には共通して「指上げ歩き」(指が浮いている状態)がある。母指が上がっているので、踏ん張る力や蹴り出す力が弱い。つまり歩行時母指や足裏全体が地面に機能的な役割を持って接地していないのである。
このため、歩行時母指が必要以上に小指側に押されてしまう形となる。これが、図6のテコの原理で説明するところの母指が「力点」となり、「支点」が母趾球部、「作用点」が第5中足骨基底部の方向となる。このように「力点」・「支点」・「作用点」の角度が加重時力学的に増すので、不安定な足裏になってしまうのである。これを整える原則や力学的なメカニズムは図7のように「支点となる母趾球部」と「作用点となる第5中足骨基底部」を押圧することである。図8は、テーピング法で「力点」を解除し、「支点」と「作用点」に力が逃げないように押圧、保持したものである。
図6:足裏の不安定(外反母趾や指上げ足)
図7:支点と作用点を押圧してバランスを整える図8:テーピングで整った足裏のバランス
このとき「支点」となる母趾球部の押圧には、中足関節にあたる横アーチが再生され、「作用点」となる第5中足骨基底部の押圧・保持は、リスフラン関節にあたる縦アーチが再生されやすくなる。また、足裏の不安定には高い割合で内反小指が見られ、小指のテープは、横アーチの再生をより可能にすることができる。つまり、「母指と小指を広げると横アーチが効率的に再生される。」この原則に従っているのである(図9)。このようなメカニズムで足裏の不安定(アンバランス)を力学的に整えると、足裏が安定し、足指が正常位置に近づく。バランスを保たれた状態で歩行させ、踏み込むことが重要である。「外反母趾」や「指上げ足」、そのほかの足の異常や不安定に対し、これを一定期間行うことが効果的である。
図9:支点と作用点を押圧すると指が開く原理
専門書「過労性構造体医学」(医道の日本社 出版)より抜粋
新しい考えです。詳しく知りたい方はぜひとも本書を参考にして下さい。